手入れの悪いぬか床は腐ります。
ぬか床は6~8%程度(またはそれ以上)の塩分濃度とpH4.3前後の水素イオン指数によって腐敗から守られています。しかし何らかの原因により「塩分濃度が薄まる」「pHが上昇する」などの変化が起こると腐敗菌の増殖を許して腐ってしまいます。腐るときはあっという間です。
ぬか床を腐らせないためには腐る仕組みを理解していることが大切です。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- ぬか床が腐ってしまう仕組みは?
- アンモニア臭が生じてしまい理由は?
- ぬか床を腐らせないためのポイントは?
ぬか床は塩分濃度と酸性pHにより守られています。
塩分濃度が保たれていなければ耐塩性を持たない雑菌が増殖して腐りやすくなり、酸性pHが保たれていなければ中性からややアルカリ性を好む雑菌が増殖して腐りやすくなります。また酸味が強くなる過ぎることで腐敗につながることもあります。
ぬか床の手入れは注意深く観察することが最初の一歩です。
ぬか床が腐ってしまう仕組みは?
手入れをされているぬか床は半永久的に腐りません。
これはぬか床を腐らせる原因菌の多くには「耐塩性を持たない」「中性からややアルカリ性の環境を好む」などの特徴があるためです。このことからもぬか床の手入れの目的は6~8%以上の塩分濃度とpH4.3前後の酸性pHを維持することになります。
この2つの条件さえ維持できていればぬか床は腐りません。
- 塩分濃度:6~8%
- 水素イオン指数:pH4.3前後
特に注意して欲しいのが酸性pHです。
塩分濃度は水抜きなどにより減少してしまうことはあるものの極端な変化は起こりません。しかし酸性pHは乳酸菌の働きやタンパク質(アミノ酸)の分解などにより、目に見えない形で急激に変化してしまうことがあるために気づいた時には手遅れになっていることもあります。
せっかくのぬか床、無関心は良くありません。
塩分濃度を維持するためには?
ぬか床は6~8%の塩分濃度で守られています。
多くの腐敗菌は耐塩性を持ちません。そのため6~8%ほどの塩分濃度を維持することにより腐敗菌の増殖を防ぐことができます。ぬか床の塩分濃度は野菜から出る水分などにより徐々に減少していきますので注意が必要です。
数値に厳格である必要はありません。
ぬか床の塩分濃度と発酵速度には「低くすると早く進む」「高くすると抑制される」という関係性にありますので、最適な塩分濃度というのは季節により異なります。このことからも6~8%を基本にしながらもぬか床の状態に応じて変化させていきます。
ぬか床の手入れには味見が欠かせません。
酸性pHを維持するためには?
ぬか床はpH4.3前後の酸性pHにより守られています。
多くの腐敗菌は中性からややアルカリ性の環境を好みます。そのため乳酸菌の生成する乳酸によりpH4.3前後の酸性pHが保たれていれば腐敗菌の増殖を防ぐことができます。捨て漬け野菜を食べられないのはpHが高すぎるために食中毒のリスクがあるためです。
しかしぬか床のpHは下がり過ぎても良くありません。
乳酸菌は乳酸耐性を持つ微生物ですが、あまりにも乳酸菌が増えすぎてしまうと(pHが下がり過ぎてしまうと)自らが生成した乳酸により死滅してしまいます。すると乳酸菌の死滅したぬか床には急激なpHの上昇が起こります。
酸っぱすぎるぬか床があっという間に腐ってしまうことがあるのはこのためです。
水分量とぬか床の腐りやすさの関係性は?
ぬか床の水分量は適正範囲内である必要があります。
理想的なぬか床の水分量は60%ほどと言われています。水分量60%のぬか床というのは「ぬかを握り込むと軽く水分がにじみ、団子状になったぬかは軽くつつく程度の衝撃でばらける」くらいの状態が目安とされます。
水分量は多すぎても少なすぎても良くありません。
微生物への影響 | ぬか床への影響 | |
---|---|---|
水分過多 | 乳酸菌や酪酸菌が増えやすくなる | 臭いがきつくなる |
水分不足 | 産膜酵母が増えやすくなる | アルコール臭の原因になる |
極端な場合はぬか床が腐ります。
たとえば水分過多な状態が続くと乳酸菌の異常繁殖により(乳酸菌の有する乳酸耐性以上の乳酸が生成されてしまうために)乳酸菌が死滅してしまいますし、水分不足な状態では産膜酵母の異常繁殖により乳酸が極端に消費されてしまいます。
すると急激なpHの上昇により雑菌の異常繁殖を許してしまいます。
ぬか床が傷みやすくなる食材とは?
タンパク質食材には注意が必要です。
ぬか床にはうま味を強めることを目的にした食材を加えることがあります。広く知られているうま味物質はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などです。これらのうま味物質は様々な食品に含まれていますが、煮干し、削り節、きな粉などのタンパク質を多く含む食材を加えられることがあります。
これらの食材はアンモニア臭の原因になります。
タンパク質は分解されることでうま味(アミノ酸)になりますが、分解される過程で窒素を含むアミンやアンモニアなども生成されてしまいます。アミンやアンモニアは塩基性(アルカリ性)であるために程度によってはぬか床のpHを上昇させてしまいます。
ぬか床は酸性pHと塩分によって腐敗菌の増殖を防いでいますので、pHの上昇はぬか床の腐敗につながる可能性があります。
まとめ・ぬか床が腐る仕組みは?
ぬか床は塩分濃度の低下やpHの上昇により腐ります。
ぬか床が腐らないのは6~8%程度の塩分濃度とpH4.3前後の水素イオン指数によって腐敗菌の増殖が食い止められているためです。このことからも塩分濃度と酸性pHが保たれていなければ腐敗菌の増殖を許してぬか床は腐ってしまうことになります。
特に酸性pHを維持できなくなったぬか床はあっという間に腐ります。