卵の殻はぬか床の酸味を和らげます。
昔ながらのぬか床の手入れには「卵の殻を加える」というものがあります。卵の殻は主成分が炭酸カルシウム(pH9.5~10.5)であるため、卵殻を加えるとぬか床内の酸味(乳酸による酸味)が中和されて酸味が和らぐことになります。
しかし強制的に酸味を和らげることにはリスクがあることを知っておく必要があります。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- ぬか床に卵の殻を加える効果は?
- 卵の殻の加え方は?
- 卵の殻を加えることによるリスクとは?
ぬか床に卵殻を加えるのには注意が必要です。
酸っぱすぎるぬか床に卵殻を加えると酸味が和らぎます。強すぎる酸味はぬか床を傷めてしまう原因にもなりますので効果的なテクニックといえます。しかし卵の殻には「必要以上のpHの上昇」や「サルモネラ菌の侵入」などのリスクもあります。
効果的ではありますが積極的にはおすすめできません。
ぬか床の酸味が和らぐ仕組みは?
卵の殻を加えるとぬか床の酸味が和らぎます。
ぬか漬け(ぬか床)の酸味は乳酸菌の生成する乳酸によるものです。適度であれば爽やかな酸味として好まれますが、過剰になると酸の刺激がぬか漬けの食味を落としますし、さらに酸が強くなりすぎると酸敗によりぬか床が傷むことになります。
そこで利用されることが多いのが卵の殻です。
卵の殻の主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)です。炭酸カルシウムは制酸剤としても利用されている成分ですので、アルカリ性の卵の殻を加えることにより乳酸による酸味が中和されて刺激が和らぎます。
卵の殻には即効性がありますので、夏場の高温などで急激に酸っぱくなってしまった時には有効な手段です。
強すぎる酸味がぬか床を傷める?
爽やかな酸味はぬか漬けを美味しくします。
しかし、酸味の強すぎるぬか漬けは(好みにもよりますが)美味しくありません。美味しくないだけであればまだましなのですが、酸味が強くなりすぎると(pHが低くなりすぎると)乳酸耐性を持つ乳酸菌であっても死滅してしまうことがあります。
乳酸菌の死滅したぬか床は、短期間のうちに腐ります。
このことからも、強すぎる酸味には注意が必要です。強すぎる酸味の原因には「ぬか床がゆるすぎる(水分が多すぎる)」「かき混ぜ足りない」「温度が高すぎる」などがあります。特に室温の高くなる夏場には要注意です。
余りにも酸味が強くなりすぎた場合には(一時的に)卵の殻を加えてpHが下がりすぎないようにします。
卵の殻を加えるデメリットは?
卵の殻は万能ではありません。
確かに酸味の強すぎるぬか床に卵の殻を加えることで、乳酸が中和されて「強すぎる酸味が和らぐ」「強すぎる酸性pHによる乳酸菌の死滅を防ぐことができる」などのメリットが得られます。室温の高くなる夏場には重宝されるテクニックのひとつです。
しかし、「pHが上がりすぎてしまう」「サルモネラ菌の侵入」などのリスクもあります。
このことからもぬか床に卵の殻を加える場合には「煮沸殺菌しておく」「お茶パックなどに入れていつでも取り出せるようにしておく」などのポイントを守る必要があります。
卵殻は酸(乳酸)で溶かされてなくなりますので、少量であれば直接加えても問題はありません。しかし卵殻膜(薄皮)は酸で溶かされませんので、直接加える場合には卵殻膜を取り除いておくことがポイントになります。
まとめ・ぬか床に卵の殻を入れる目的は?
ぬか床に卵の殻を加えると、ぬか床の酸味が和らぎます。
これはぬか床が酸っぱくなる原因である乳酸が卵の殻の炭酸カルシウム(CaCO3)によって中和されるためであり、即効性があることからも昔ながらの知恵として広く親しまれています。しかし「pHが上がりすぎてしまう」「サルモネラ菌の侵入」などのリスクもあります。
このことからも、煮沸殺菌した上でお茶パックなどに包んで加えることがポイントになります。