ぬか床には足しぬかが必要です。

ぬか床は熟成加減により風味が変わります。はじめたばかりのぬか床には米ぬかの風味が強く残っていますが、熟成と共に丸みのある深い風味に変わっていきます。どの段階のぬか床を美味しく感じられるかには個人差がありますので正解はありません。

足しぬかは熟成加減や水分量のコントロールに役立ちます。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • ぬか床に足しぬかをする理由は?
  • どのくらいの頻度で足しぬかをすればいいのか?
  • 足しぬかをしないぬか床はどうなるのか?

ぬか床は徐々に増えていくのが正解です。

正しく手入れされているぬか床は1年に10~30%ほどずつ増えていきます。ぬか床が増えない(もしくは減っていく)のでは足しぬかの頻度が低すぎますし、極端に増えてしまうのであればぬか漬けを漬ける量に対してぬか床が小さすぎます。

足しぬかは少なすぎても多すぎても良くありません。

足しぬかをする目的は?

ぬか床の手入れは微生物のために行います。

ぬか漬けの風味は微生物(主に乳酸菌や酵母など)により形成されています。微生物は米ぬかや野菜に含まれている各種成分を消費することにより増殖しています。その副産物として有機酸やアルコールなどの風味成分が生成されています。

このことからも足しぬかは微生物への給餌とも言えます。

  • 乳酸菌:糖を消費して乳酸を産生する微生物
  • 酵母:糖を消費してアルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)を産生する微生物

米ぬかは栄養豊富です。

ぬか床に生育している微生物の多くは糖を消費しています。しかし(砂糖が腐敗しないように)糖だけでは生育することはできませんので各種栄養素が必要になってきます。米ぬかには三大栄養素をはじめとして各種微量栄養素も豊富に含まれています。

このことからも足しぬかをすることによりぬか床を活性化させることにつながります。

足しぬかのやり方は?

足しぬかは米ぬかと食塩を足します。

基本的には米ぬかと食塩を足すだけですので難しく考える必要はありません。しかしぬか漬けの味は米ぬかと食塩の味に大きく影響されますので、米ぬかの質と鮮度にはこだわることをおすすめします。食塩は精製塩よりもあら塩を選ぶことにより味と食感が良くなります。

以下が足しぬかのやり方です。

STEP.1
米ぬかと食塩の割合
米ぬかに13~15%ほどのあら塩を混ぜ合わせる。
STEP.2
足しぬかのやり方
ゆるくなったぬか床の水分量を調整するイメージで加える。
STEP.3
足しぬか後の管理
数日ほどはかき混ぜずに休ませる。

ぬか床の塩分濃度は季節により調節します。

ぬか床の適温は20℃前後です。このことからも25℃を大きく超えるような季節には塩分濃度を高くして、15℃を大きく下回るような季節には塩分濃度を低くします。これにより酸っぱすぎるぬか漬けやしょっぱいだけのぬか漬けを防ぎやすくなります。

いずれにしても基本となる6%前後の塩味を覚えておくことがポイントになります。

また風味に関わる材料(昆布、干し椎茸、唐辛子、柑橘類の皮、山椒の実など)もこのタイミングで加えることをおすすめします。足しぬか後の数日間はぬか床を休ませることになりますので味がなじみやすくなります。

ぬか床を休ませる理由は?

足しぬか後のぬか床は休ませます。

ぬか床は6%ほどの塩分濃度とpH4.5ほどの水素イオン指数によって腐敗菌の増殖を防いでいます。しかし足しぬか後のぬか床は(乳酸が薄まるために)水素イオン指数が上昇してしまいますので休ませることで乳酸菌の働きを促します。

これは乳酸菌が嫌気性菌であるためです。

たとえばぬか床の主役ともいえる微生物は乳酸菌(L.plantarumやL.brevisなど)ですが、L.plantarumは通性嫌気性ヘテロ型発酵であるために酸素により活動が鈍化し、L.brevisは変性嫌気性ヘテロ型発酵であるために酸素により死滅してしまいます。

これらのことからも休ませることで乳酸菌を増やしていきます。

足しぬかの頻度や注意点は?

足しぬかの頻度はぬか床の状態によります。

頻度が低すぎれば「微生物が弱る」「ひねた味になる」などのデメリットが生じますし、頻度が高すぎれば「風味が弱くなる」「酸性pHが維持できずに腐りやすくなる」などのデメリットが生じやすくなります。

足しぬかはタイミングと量がポイントになります。

ぬか床への影響
過少
(頻度が低すぎる)
微生物が栄養不足になる
ひねた味になる
過多
(頻度が高すぎる)
風味が弱くなる
ぬか床が腐りやすくなる

またぬか床の大きさ(容量)にも影響します。

ぬか床には野菜を漬ける量に応じた適切な大きさがあります。ぬか床が小さすぎれば「すぐにゆるくなる」「酸っぱくなる」「臭くなる」などの問題が生じやすくなり、大きすぎれば「発酵(熟成)しない」「風味が弱い」などの問題が生じやすくなります。

このことからもぬか床は使用頻度(量)に応じた大きさにしておく必要があります。

まとめ・ぬか床の足しぬかとは?

ぬか床には定期的に米ぬかと食塩(あら塩)を足す必要があります。

このことを足しぬかと言います。ぬか床に生育している微生物は米ぬかや野菜に含まれている各種成分を消費して風味成分を生成していますが、足しぬかをしなければ微生物への栄養素が不足するためにぬか床の風味が悪くなっていきます。

正しく管理されているぬか床は1年に10~30%ほどは増えていくとされています。