少ない油で揚げ物をするためには小さな鍋が便利です。

揚げ物に小さな鍋を利用すると「油の量が少なくて済む」「片付けが簡単」などのメリットが得られます。このことからも雪平鍋(アルミニウム製の片手鍋)を揚げ物鍋として利用する方は少なくありません。飲食店で利用されていることもあります。

私自身、たまにではありますが雪平鍋での揚げ物をします。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • アルミの雪平鍋でも揚げ物はできるのか?
  • 揚げ物に対する雪平鍋の特徴は?
  • 雪平鍋で揚げ物をする際の注意点は?

雪平鍋での揚げ物は積極的にはおすすめしません。

アルミニウム製の片手鍋でも問題なく揚げ物をすることができます。しかし雪平鍋での揚げ物には「温度変化が大きい」「木製のハンドル(取っ手)が低温炭化してしまうリスクがある」「ハンドルが邪魔になることがある」などのデメリットがあります。

このことからも雪平鍋での揚げ物には普段以上の注意が必要です。

雪平鍋では油の温度が安定しにくい理由は?

アルミ鍋は油の温度が安定しにくい鍋です。

おいしい揚げ物のポイントには「油の温度を安定させること」があります。食材を入れるたびに温度が下がってしまっては揚げ物が油っぽい仕上がりになってしまうためです。そのため(特に油の使用量の少ない一般家庭での揚げ物には)重い揚げ物鍋が推奨されています。

これは重い鍋であるほどに熱容量が高くなるためです。

比熱
kJ/(kg・K)
密度
g/cm3
0.39 8.96
アルミニウム 0.91 2.7
0.44 7.87
ステンレス
SUS405
0.46 7.9

熱容量は「比熱×密度」によって求められます。

アルミニウムは密度が低い素材であるために食材を入れた時の温度変化(油の温度の低下)が大きくなります。そのためアルミ鍋で美味しい揚げ物を作るためには「油の量を増やして温度の低下を最小限に抑える」ことがポイントになってきます。

少ない油で揚げ物をするために雪平鍋を選んでいる場合には本末転倒です。

注意

理想的な揚げ物をするために必要な油の量は「材料の10倍以上の重さ」「材料の3倍以上の高さ」「材料が表面積の1/3程度になる広さ」とされています。このことからも揚げ物鍋には熱容量の大きな重い鍋(鉄鍋は鋳物琺瑯鍋など)を使うと少ない油でも仕上がりが良くなります。

食材が鍋底に張り付いてしまいやすい?

アルミ鍋での揚げ物は食材が鍋底にくっついしまうことがあります。

雪平鍋を使って少ない油で揚げ物をした場合、高い確率で食材がくっついてしまいます。これは食材がアルミニウムの熱を奪ってしまうためであり、表面が焼き固められる前にアルミニウムの金属面と食材のタンパク質が凝着してしまうためです。

熱容量が小さいために熱伝導率の良さが仇になってしまいます。

熱伝導率
W/(m・K)
398.0
アルミニウム 237.0
ステンレス
SUS405
27.0
80.3

熱伝導率の良さは揚げ物鍋としてのメリットになります。

熱伝導率に優れた素材の揚げ物鍋を使うと、油がムラなく温まりやすくなるために仕上がりが良くなります。そのため天ぷら店などでは銅の揚げ物鍋が好まれていますが、アルミニウムは(よほどの厚板でない限りは)熱容量が小さいために銅鍋のようにはきません。

雪平鍋で揚げ物をすると食材が鍋底にくっついてしまうのは熱容量が小さいためです。

揚げ物をすると取っ手がダメになってしまう?

雪平鍋で揚げ物をすると取っ手が焼けてしまいます、

雪平鍋の取っ手は木製です。木は熱伝導率が悪く熱を伝えにくい素材ですので熱伝導率に優れた素材(銅やアルミニウムなど)で作られた調理道具(雪平鍋、卵焼き器、親子鍋など)の取っ手として利用されていることがあります。

揚げ物は160~200℃の温度帯を利用する調理法です。

一般的な木材の発火温度は400~450℃です。当然、揚げ物をしても木の取っ手が燃えることはありませんが、たとえ170℃という低温であっても長時間の加熱により木材の炭化や低温発火を起こしてしまうことがあります。

150℃程度でも長時間、木を温め続けると、内部の組織が変化して炭化が始まることがあり、これを低温炭化といいます。

揚げ物の温度(160~200℃)で直ちに木製の取っ手がダメになってしまうことはありませんが、繰り返し使うことによって徐々に炭化していきます。雪平鍋の取っ手がダメになってしまう原因の多くは炒め物や揚げ物による160℃以上での低温炭化によるものです。

炒め物であれば大きな問題にはなりませんが、揚げ物鍋として使うことは安全性の面からもおすすめできません。

揚げ物鍋には両手鍋がおすすめな理由は?

揚げ物鍋には両手鍋が適しています。

揚げ物は高温に熱した油を扱う調理方法ですので、調理中の事故には細心の注意を払う必要があります。そのため「取っ手に衣類がかかったり手を当ててしまうことによる転倒事故」のリスクを減らすためにも片手鍋は推奨されていません。

特に木製の取っ手は低温炭化による破損のリスクもあります。

これらのことからも雪平鍋での揚げ物はおすすめしません。少ない油での揚げ物をしたい場合には「フライパンでの揚げ焼き」や「熱容量の大きな両手鍋(鉄の厚板鍋や鋳物鍋など)」をおすすめします。安価なものでも十分に事足ります。

アルミの雪平鍋を使うよりは良い結果になります。

まとめ・雪平鍋は揚げ物にも使える?

アルミの雪平鍋は揚げ物に適さない鍋です。

揚げ物には温度変化の少ない鍋(熱容量の大きな鍋)が適していますので、温度変化の大きなアルミ鍋はおすすめしません。また雪平鍋は木の取っ手のついた片手鍋であることが多いため、取っ手の低温炭化や転倒事故のリスクを減らすためにもおすすめはできません。

雪平鍋での揚げ物をする場合には注意が必要です。