鉄フライパンとスキレットは異なる調理道具です。

同じ土俵で語れることの多い鉄フライパンとスキレットですが、両者の間には明確な違いがあります。これは鉄フライパンが鋼鉄をプレスや叩き出しで作られているのとは違い、スキレットが鋳鉄を鋳型に流し込んで作られているためです。

この違いが両者の機械的性質に影響しています。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 鉄フライパンとスキレットの違いは?
  • 鉄フライパンとスキレットの使い分けは?
  • 鋼鉄と鋳鉄の調理における注意点は?

鉄フライパンとスキレットの大きな違いは材質です。

どちらも鉄で作られていることに違いはありませんが、鉄フライパンは鋼鉄で作られているために靭性(粘り強さ)に優れており、スキレットは鋳鉄で作られているために硬度(耐摩耗性)に優れています。またサビやすいのはスキレットですが、サビが進行しやすいのは鉄フライパンです。

どちらにも一長一短があります。

材質としての鋼鉄と鋳鉄の違いは?

鉄フライパンとスキレットはどちらも鉄でできています。

しかし同じ鉄であっても鉄フライパンは鋼鉄でありスキレットは鋳鉄です。鉄フライパンは鋼鉄の圧延鋼(熱間圧延鋼板や冷間圧延鋼板など)をプレスもしくは打ち出しで作られていますが、スキレットは溶かした鉄を鋳型に流し込んで作られています。

そのため鋼鉄と鋳鉄とでは炭素量が違います。

  • 純鉄:炭素量0.02%未満
  • 鋼鉄:炭素量0.02~2.14%
  • 鋳鉄:炭素量2.1~6.67%

炭素量はサビやすさにも影響します。

鉄は炭素量が大きくなるほどにサビやすくなります。そのため炭素量の大きい鋳鉄(スキレット)は赤サビの発生しやすい調理道具だといえます。しかし炭素はサビませんので炭素そのものが機械的な固定効果(アンカー効果)を発揮してサビが進行しにくくなります。

これにより鉄フライパンの赤サビは内部まで進行しますが、スキレットの赤サビは表面で止まることが多くなります。

道具としての鉄フライパンとスキレットの違いは?

鋼鉄と鋳鉄とでは機械的性質に違いがあります。

鋼鉄と鋳鉄の違いは炭素量です。鉄は炭素量が大きくなるほどに「硬度が高くなり靭性が低くなる」という性質があります。鉄フライパンは靭性(粘り強さ)が高く、スキレットは硬度(耐摩耗性)の高い道具であることになります。

以下のようなイメージです。

耐摩耗性 靭性(粘り強さ)
鉄フライパン
(鋼鉄)

優れている

とても優れている
スキレット
(鋳鉄)

とても優れている
×
劣っている

注目して欲しいのは靭性です。

靭性とは素材の持つ粘り強さですが、鉄フライパンは靭性に優れているために衝撃に強く落下や急冷により割れることはありませんが、スキレットは靭性に劣るために衝撃や温度変化によりクラックが生じて(割れて)しまうことがあります。

スキレットのクラックは修復できません。

どのような基準で使い分けるべきか?

料理がより美味しくなるのはスキレットです。

鉄フライパンとスキレットには熱容量の違いがあります。これは鉄フライパンが板厚1.6~3mmほどであるのに比べ、スキレットの板厚は5mmほどであるためです。これによってスキレットには「温度が下がりにくい」「熱ムラができにくい」などのメリットがあります。

しかしスキレットには「余熱に時間がかかる」「衝撃や温度変化に弱いために後片付けにも時間がかかる」などのデメリットもあります。

これらのことからも時間的な余裕がない場合には鉄フライパンを選び、時間に余裕のある場合にはスキレットをおすすめします。鉄フライパンは調理後にすぐに洗えますので後片付けが容易ですが、スキレットは粗熱が取れるのを待つ必要があります。

またスキレットは衝撃に弱いために乱暴には扱えません。

家庭料理にはどちらがおすすめか?

どちらかと言えば鉄フライパンがおすすめです。

鉄フライパンは(スキレットほどではないにせよ)熱容量の高いフライパンですので、一般的なフッ素樹脂加工のフライパンよりも料理が美味しくなります。またスキレットのように割れる心配はありませんので多少乱暴に扱っても大丈夫です。

家庭料理において汎用性が高いのは鉄フライパンです。

しかし特別な日の料理(たとえばちょっとしたお祝い事など)には料理が美味しくなってそのまま出しても見栄えの良いスキレットもおすすめできます。もちろん日常的に使用することもできますが、よほどのスキレット好きでなければ片付けなどを手間に感じるはずです。

これらのことからも「おすすめは鉄フライパンですがスキレットもあれば尚よい」というのが素直な考えです。

まとめ・鉄フライパンとスキレットの違いは?

鉄フライパンとスキレットはどちらも鉄製です。

しかし鉄フライパンが鋼鉄で作られているのに対し、スキレットは鋳鉄で作られています。この違いが「鉄フライパンは衝撃や温度変化に強く耐摩耗性に劣る」「スキレットは耐摩耗性に優れ衝撃や温度変化に劣る」という違いとなって表れています。

どちらにも一長一短がありますが、日常的な家庭料理に使用する場合には鉄フライパンの方が汎用性が高くおすすめできます。