ぬか漬けは米ぬかの発酵床により作られます。

身近な健康食品としても人気のぬか漬けですが、間違った手入れをされているぬか床で漬けられたぬか漬けには食中毒のリスクがあります。特にはじめたばかりで発酵の進んでいないぬか床ではその傾向が強く、軽度の食中毒によりお腹がゆるくなってしまうことも珍しくはありません。

ぬか床の管理には注意が必要です。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • ぬか漬けを食べてお腹がゆるくなったことがある
  • 自己流のぬか床の手入れに不安がある
  • 捨て漬けに使った野菜は食べられないのか?

ぬか漬けは食中毒の原因になり得ます。

ぬか漬けは米ぬかを乳酸発酵させた発酵床に、旬の野菜などを漬けて作られます。正しく手入れをされているぬか床は適切な塩分濃度と水素イオン指数(pH)により食中毒の原因菌から守られていますが、これらの条件が守られていないぬか床には食中毒のリスクがあります。

食中毒を起こさないためにも正しい手入れをする必要があります。

ぬか漬けによる食中毒の原因菌とは?

ぬか漬けによる食中毒には複数の原因菌があります。

たとえば魚介類を触った手でぬか床の手入れをすれば腸炎ビブリオのリスクがありますし、卵を触った手にはサルモネラ属菌、手荒れをしている場合には黄色ブドウ球菌、広く存在しているリステリア菌など、挙げていけばきりがありません。

ぬか床の手入れには清潔を心がけることがポイントになります。

原因 症状
腸炎ビブリオ菌 魚介類など 上腹部の激しい痛み、下痢、発熱など
サルモネラ菌 卵など 悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱など
黄色ブドウ球菌 手荒れなど 嘔吐、腹痛、下痢など
リステリア菌 広く存在している 倦怠感、発熱を伴うインフルエンザ様症状
ノロウイルス 二枚貝など 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など

特に注意して欲しいのが手荒れです。

肉や魚を触った手でぬか床の手入れをする方はおられないはずです。しかし手荒れは見逃されやすい汚染ルートになりますので、日常的に手荒れに悩まされている方や手に傷のある方は「手袋をしてぬか床の手入れをする」ことが大切です。

衛生管理を徹底することによりぬか床の状態も良くなります。

正しく手入れをされているぬか床が安全な理由は?

ぬか床は食塩と酸性pHにより守られています。

ぬか床は6~8%前後の塩分濃度とpH4.5前後の水素イオン指数により腐敗菌(バチルス属、シュードモナス属、ミクロコッカス属など)の生育を抑制して、発酵菌(乳酸菌や酵母など)が優位になる生育環境を作り出しています。

このことからも塩分とpHには注意を払う必要があります。

目標値 効果
塩分濃度 6~8%前後 耐塩性を持たない微生物を退ける
水素イオン指数 pH4.5前後 酸に弱い微生物を退ける

これらが維持されていればぬか床は腐りません。

また漬物が原因食品として特定された食中毒の多くは一夜漬けなどの塩分濃度が低く酸味のない漬物となっています。たとえば前項にて触れた腸炎ビブリオ菌は好塩性で2~5%の食塩存在下でよく増殖できますが、pH5.5以下では増殖できないためにぬか床の酸性pHが適切に維持されていれば問題ありません。

食中毒を防ぐためには塩分濃度と酸性pHが大切です。

注意

ぬか床の減塩レシピはおすすめしません。塩分濃度の極端に低いぬか床が紹介されていることもありますが、食中毒や腐敗のリスクが高くなることからもおすすめできません。安全なぬか床には(低くても)米ぬかに対して13%以上の塩が含まれています。

捨て漬け野菜を食べてはいけない理由とは?

捨て漬け野菜を食べてはいけません。

もちろん(味を良くするなどの理由から)熟成しているぬか床に漬けたものであれば問題はありませんが、始めたばかりのぬか床に熟成を促すために漬けた野菜には多くの雑菌(バチルス属、シュードモナス属、ミクロコッカス属など)が付いています。

食中毒を防ぐためにも1~2週間ほどは我慢してください。

ぬか床をはじめると、はじめは乳酸球菌や雑菌が生育します。雑菌は乳酸球菌の産生する乳酸により死滅していきます。さらに乳酸が増えてpHが下がることにより乳酸球菌もゆっくりと死滅していき、最後には強い乳酸耐性を持つ乳酸桿菌が増えていきます。

この段階になると食中毒のリスクは限りなくゼロに近くなります。

まとめ・ぬか漬けによる食中毒とは?

ぬか漬けには食中毒のリスクがあります。

特に塩分濃度を低くしているぬか床や酸味の少ないぬか床(pHの高いぬか床)は腐敗や食中毒のリスクが高くなりますので注意が必要です。ぬか床による食中毒を防ぐためには「衛生管理を徹底すること」と「塩分濃度と酸性pHを維持すること」がポイントになります。

発酵食品は理屈を理解できていることが大切です。