鉄フライパンはトマト料理が苦手です。

鉄フライパンには「熱容量が高いために温度が安定しやすい」「鉄イオンにより焼き目が付きやすい(メイラード反応が促進される)」などの特徴があります。そのため肉や野菜などをシンプルにソテーしただけでも一般的なフッ素樹脂加工のフライパンとは異なる仕上がりになります。またフッ素樹脂加工が施されていないために数年おきに買い替える必要もありません。

とても魅力的なフライパンです。しかし万能というわけでもありません。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 鉄フライパンに向かない料理とは?
  • 料理によっては鉄臭くなってしまう理由は?
  • 鉄フライパンのデメリットとは?

鉄フライパンは酸やアルカリに弱い傾向にあります。

鉄には酸と反応する(イオン化してしまう)という特徴があります。そのためトマトやお酢などを多く使う調理をすると金属の表面が溶かされてしまいます。軽度であれば大きな問題はありませんが、場合によっては「料理が鉄臭くなってしまう」「料理が変色してしまう」などのリスクもあります。

また鉄はアルカリとは反応しませんが鉄フライパンの表面に形成されている油膜が落ちやすくなるために「料理が油臭くなる」などの問題が生じやすくなります。

鉄フライパンに向かない料理とは?

鉄フライパンは家庭料理にもおすすめできるフライパンです。

鉄フライパンは中華鍋よりも熱容量が高く、スキレットよりも丈夫(衝撃や温度変化に強い)です。これによりステーキやハンバーグなどをおいしく焼けながらも、フライパンをあおるような調理が可能になっています。もちろんフッ素樹脂加工のフライパンのように数年おきに買い替える必要もありません。

以下は一般的傾向での比較です。

重さ 熱容量 靭性(粘り強さ) 硬度(耐摩耗性)
フッ素樹脂加工のフライパン
軽い
×
小さい

やや劣る
×
劣っている
中華鍋
普通

やや劣る

高い

優れている
鉄フライパン
重い

大きい

高い

優れている
スキレット ×
とても重い

とても大きい
×
とても低い

とても優れている

鉄フライパンはおすすめできます。

しかしフッ素樹脂加工が施されていませんので「油膜を形成させる必要がある」「酸が強いと金属面が溶かされてしまう(料理が鉄臭くなってしまう)」「アルカリが強いと油膜が剥がれてしまう(料理が油臭くなってしまう)」などのデメリットもあります。

これらのことからもフッ素樹脂加工のフライパンほどの汎用性はありません。

トマト料理が苦手な理由とは?

鉄フライパンはトマト料理が苦手です。

これは鉄フライパンの表面がトマトの酸により溶かされてしまう(イオン化されてしまう)ためであり、鉄フライパンでトマトの煮込み料理などをすると料理が鉄臭くなります。また同様の理由からワインやコーラ、ビールを使った料理にも向いていません。

鉄は料理により溶かされやすい金属です。

金属のイオン化傾向は「アルミニウム(Al)>鉄(Fe)>銅(Cu)」の順番ですが、アルミニウムには空気に触れることや米のとぎ汁を煮立たせることなどによりアルマイトに似た簡易的な保護皮膜を形成させる特徴があります。

そのため調理におけるイオン化傾向は鉄の方が大きいと考えられています。

補足

鉄フライパンが酸を含む料理を苦手としているのは事実ですが、絶対に調理をしてはいけないわけでもありません。チリソース炒めや甘酢炒めなどのように短時間で済む料理であれば大きなダメージにはなりませんので過度に心配する必要はありません。

煮込み料理やアルカリ性が苦手な理由は?

鉄フライパンは煮込み料理やアルカリも苦手です。

鉄の調理道具で煮込み料理をすること自体に問題はありません。事実、ダッチオーブンなどは煮込み料理を得意としています。しかし焼き物(鉄板を熱媒体とした焼き方)をすることの多い鉄フライパンでは油膜が緩んでしまいます。

シーズニングによって形成されている油膜の正体は頑固な油汚れに近いものですので、水を長時間に立たせるような調理法は油膜へのダメージになります。

STEP.1
油膜の正体は?
油ならし(シーズニング)により形成される油膜は油を酸化重合させたものです。仕組みとしては頑固な油汚れと同じものとなります。
STEP.2
アルカリや煮込み料理は油膜を緩める
油膜(頑固な油汚れ)はアルカリ性やお湯を沸騰させることで緩みます。頑固な油汚れに温めたアルカリ性洗剤を使用するのと同じ理屈です。
STEP.3
油切れが起こりやすくなる
鉄フライパンに食材がくっつきやすくなるのは油切れを起こすことによるものですので、油膜が取り除かれてしまうと扱いにくくなります。
STEP.4
サビやすくなる
鉄フライパンの油膜はサビ(赤サビ)を防ぐことにも役立っています。油膜が取り除かれてしまうとサビやすくなり鉄フライパンの寿命を縮めることになります。

またアルカリ性の調理も苦手です。

たとえば中華麺はかん水(アルカリ塩水溶液)を含んでいるためにアルカリ性です。鉄フライパンの油膜は頑固な油汚れのようなものですので、アルカリが遊離脂肪酸を鹼化(油脂が石鹸とグリセリンになる反応)させることで油膜が落ちやすくなります。

油膜の落ちた鉄フライパンは食材がくっつきやすくなり扱いにくくなります。

まとめ・鉄フライパンに向かない料理は?

鉄フライパンは酸やアルカリに弱い傾向があります。

鉄は酸と反応してイオン化します。そのため酸の強い食材(トマトやお酢など)を多く使う料理では金属面が溶かされます。またアルカリは油脂を鹼化させますので、シーズニングによって形成された油膜が落とされてしまいます。

その結果、鉄フライパンは扱いにくくなり「鉄臭い料理」や「油臭い料理」の原因になります。