小麦粉や片栗粉は使い分けられます。
食材(肉や魚、野菜など)には小麦粉や片栗粉などの粉ものをまぶすことがあります。一見して意味のないように思われるかもしれませんが、料理の仕上がりには大きな違いが生じます。和食の世界では「下衣をつける」といわれる重要な工程です。
目的が理解できていると応用も効くようになります。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- 食材に小麦粉や片栗粉をまぶす理由は?
- まぶす粉の種類(小麦粉と片栗粉など)の違いは?
- 粉のまぶし方は?
食材には粉をまぶすことがあります。
粉(小麦粉や片栗粉など)をまぶすことにより「うま味や水分などを閉じ込めることができる」「焼き色がつきやすくなる(メイラード反応が起こりやすくなる)」「味をなじませやすくなる」「衣をつけやすくなる」などのメリットが得られるためです。
粉の種類は、目的により使い分けられます。
食材に壁を作る効果とは?
粉は食材に壁を作ります。
小麦粉や片栗粉にはでんぷんが含まれています。でんぷんは加熱されることで「でんぷんの壁」を作りますので、うま味や水分が逃げにくくなります。粉をふることによって「うま味が逃げにくくなる」「蒸し焼きのような状態になる」などのメリットが得られるわけです。
パサつきやすい食材の調理には、特におすすめできます。
たとえば水晶鶏(そぎ切りにした鶏胸肉に片栗粉をまぶして茹でた料理)が多少加熱しすぎてしまってもしっとりしているのは「でんぷんの壁によって蒸し料理のようになる」ためです。片栗粉をまぶさずに加熱してしまえばすぐにパサパサになってしまいます。
また粉をふっておくことにより味のからみも良くなります。
衣への接着剤としての効果とは?
粉類には接着剤としての効果もあります。
パン粉揚げ(フライなどのようにパン粉をつけて揚げる料理)は「小麦粉→卵→パン粉」の順に調理します。この場合の小麦粉には「でんぷんの壁を作ってうま味や水分を閉じ込めること」の他に「卵やパン粉を剥がれにくくする」という役割があります。
天ぷらも下衣をつけておくことで仕上がりが良くなります。
ちなみにポテトコロッケなどのようなでんぷん質の食材には小麦粉をふらないこともあります。これはじゃがいもに含まれているデンプンが小麦粉の役割を兼ねるためであり(小麦粉をふるレシピは多いものの)小麦粉をふらなくても大きな違いにはならないことが確認されています。
この場合は調理性というよりは風味の違いにより使い分けられます。
焼き色や香り(メイラード反応)とは?
焼き色は料理のおいしさに深く関わっています。
料理における好ましい焼き色はメイラード反応(アミノカルボニル反応)と呼ばれており、メイラード反応は料理に対して「褐変反応が起こす」「多数の香気成分を生成する」などの変化を起こします。揚げ物やパンの耳が茶色いのはメイラード反応によるものです。
おいしい料理にはメイラード反応が欠かせません。
メイラード反応には「アミノ酸と還元糖の結合を出発点としている」という特徴がありますので、メイラード反応が起こりにくい食材であっても粉(小麦粉など)をふることによって褐変反応や香気成分の生成が起こりやすくなります。
豚肉に小麦粉をふることが多いのは、豚肉が焼き色の付きにくい食材であるためです。
小麦粉や片栗粉などの使い分けとは?
粉類は調理法によって使い分けられます。
たとえばうま味や水分を閉じ込めるためにはでんぷん含有量の多い片栗粉が適していますし、焼き色や香ばしい香気成分を重視する場合にはたんぱく質(アミノ酸)含有量の多い小麦粉が適しているということになります。
以下は、主な特徴です。
- 片栗粉(デンプン):うま味や水分を閉じ込めやすい
- 小麦粉(デンプン+タンパク質):メイラード反応が起こりやすい
風味により使い分けることもあります。
ちなみに粉類は調理の直前にまぶすのがポイントです。粉をまぶしてから調理までの時間が空いてしまうと、粉に粘りが出てしまいます。粘りの出た粉類には「食感が悪くなる」「調理が難しくなる」などのデメリットが生じますので注意が必要です。
またムラなく薄くつけることもポイントであったりもします。
まとめ・食材(肉や魚など)に粉をまぶす理由は?
食材には粉をまぶすことがあります。
片栗粉には「でんぷんの壁により食材の水分やうま味を閉じ込めやすくなる」というメリットがあり、小麦粉には「(片栗粉ほどではありませんが)でんぷんの壁を作る」「たんぱく質が含まれているためにメイラード反応(アミノカルボニル反応)が起こりやすくなる」というメリットがあります。
これらのちょっとしたひと手間は、料理の仕上がりを大きく変えます。