肉の軟化にはいくつかの方法があります。
たとえば食塩水(ブライン液など)はタンパク質の溶解に効果的であり、酢水(マリネ液など)はタンパク質の分解や保水力の向上に効果的です。また野菜やフルーツ、麹などに含まれているタンパク質分解酵素が利用されることもあります。
重曹水にも肉を柔らかくする効果があります。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- 重曹水で肉が柔らかくなる仕組みは?
- 重曹水のメリットとデメリットは?
- どのくらいの濃度にすればよいのか?
重曹水には食肉への軟化効果があります。
肉には水素イオン指数(pH)を酸性かアルカリ性に傾けることにより保水性が向上するという性質があります。これは電荷の反発によって筋原線維タンパク質が緩むためであり、緩んだ部分に水分が入り込むことで柔らかい仕上がりになります。
この効果は1.5~3%程度の重曹水に浸けることで得られます。
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軟化の仕組みは?
重曹水には肉を柔らかくする効果があります。
重曹(炭酸水素ナトリウム)で肉が柔らかくなるのは筋原線維タンパク質が緩むことにより保水性が高くなるためです。重曹水はpH8.5前後の弱アルカリ性を示すため、アルカリ由来のプラスイオンまたはマイナスイオン同士の反発が起こります。
その結果、筋原線維タンパク質が緩んで軟らかくなり、その隙間に水分が保持されることによってジューシーな仕上がりになります。
同様の効果は酸性側に傾けても得られます。
たとえば肉をマリネする(お酢やレモン汁などに浸す)ことがあるのは、マリネ液の酸性pHによって「筋原線維タンパク質が緩みやすくなる」「酸性プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が活性化してタンパク質の分解が促進される」などの効果が望めるためです。
この性質は弱酸性において最も低くなることが確認されていることからも、酸性側よりもアルカリ性側に傾けた方が効果は得られやすくなります。
重曹水のデメリットは?
重曹水による軟化にはデメリットもあります。
重曹水による処理には「重曹特有のにおいや苦味が残ることがある」「フラボノイド(ポリフェノール)と反応すると黄色く変色する」「アルカリ性に傾くことで味がぼやける」などのデメリットがあります。また明確な証拠は示されてはいないものの「ビタミンB1の損失が大きい」などの情報もあります。
素材の良さを最大限に活かしたい場合には向かない可能性があります。
- 臭いや苦味が生じる:重曹が残る
- 変色する:フラボノイドと反応する、メイラード反応が促される
- 味がぼやける:多くの味付けは弱酸性で美味しく感じられやすい
重曹は炭酸水素ナトリウム(Na2CO3)です。
炭酸水素ナトリウムには加熱や酸と反応させることで二酸化炭素(炭酸ガス)を放出する働きがありますが、反応しきれずに残ってしまうと重曹特有の臭みや苦味が生じてしまいます。重曹の臭いは、どら焼きなどに感じることのある特有の風味です。
また色も濃くなります。
重曹には「フラボノイド(ポリフェノール)と反応して黄色く変色する」「メイラード反応(アミノカルボニル反応)が促されて褐色になる」などの作用があるためです。
これらの作用により淡い色の料理には避けられます。
重曹水による軟化方法は?
肉を軟化させるためには重曹水に浸します。
アルカリ性(塩基性)pHによる肉の軟化には「1.5~3%程度の重曹水」が理想的だと考えられています。具体的には小さじ1(5g強)の重曹を1~1と1/4カップ(200~250ml)ほどの水に溶かすことで肉の軟化に適した濃度になります。
浸けこむ時間に正解はありません。
はじめは30分ほどで試してみることをおすすめしますが、浸けこむ時間が長すぎると「タンパク質の繊維が解け過ぎて食感が損なわれる」「アルカリ性と重曹のにおいにより肉の風味がぼやけてしまう」などのデメリットが大きくなります。
また重曹水に浸けこむ以外には「少量の重曹をもみ込む方法」などもあります。
まとめ・重曹水で肉が柔らかくなる仕組みは?
肉は重曹水に浸すことでやわらかくなります。
これは重曹水がpH8.5前後の弱アルカリ性を示すために「アルカリ由来のプラスイオンまたはマイナスイオン同士が反発を起こして筋原線維タンパク質が緩む」ためです。ゆるんだ隙間には水分が入り込むためにジューシーな仕上がりになります。
味がぼやけやすいなどのデメリットはありますが、使えるテクニックです。