燻製は苦くなることがあります。

燻製は木の煙で燻すことによって作られていますが、燻煙の中には400種類以上の物質が含まれています。その中には苦味を有するものも少なくはなく、燻製の手順や燻煙材(チップの種類)によっては強い苦味が生じてしまうことがあります。

燻製に慣れないうちは注意が必要です。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 燻製が苦くなってしまう理由は?
  • 苦くならない燻製方法は?
  • 苦くなってしまった燻製はどうすればいい?

苦い燻製の原因は乾燥不足と燻煙材にあります。

燻製は食材を乾燥させてから燻煙しますが、乾燥が不十分だと表面の水分に煙の成分が溶け込んでしまうために「苦くて美味しくない燻製」や「酸っぱくて美味しくない燻製」になってしまいます。また燻煙の香りは木材の基礎成分により変化します。

そのため燻煙前の乾燥と燻煙材の選び方がポイントになります。

水分により苦くなる仕組みは?

乾燥不足は苦味の原因になります。

燻製は食材を乾かしてからスモークします。これは食材表面に水分が残っていると煙の成分が溶け込んでしまって不必要な苦味や酸味が生じてしまうためです。適切に乾燥させた食材であれば適度に煙ののった(樹脂皮膜が形成された)美味しい燻製になります。

また小型のスモーカーには注意が必要です。

密閉性の高いことの多い小型のスモーカーは、煙と一緒に水蒸気も対流させてしまいます。そのため短時間で強い香りがつく傾向にあり、苦味や酸味の強すぎる燻製に仕上がってしまうことが少なくありません。

手軽に見えて扱いが難しいのが小型スモーカーです。

燻煙材の種類により苦くなる仕組みは?

燻製の香りは燻煙材の基礎成分により変化します。

多くの木材はセルロース(40~60%)、ヘミセルロース(20~25%)、リグニン(20~35%)、微量成分(数%)によって構成されています。これらの基礎成分は熱分解により異なる副産物が生成され、この違いが風味の変化となって現れます。

ここで注意すべきはリグニンの割合です。

特徴
セルロース
ヘミセルロース
甘い匂いや果実、花、パンなどの香り
リグニン スパイス臭、甘い匂い、ツンとする匂い

リグニンの多い木材を使用すると苦味や辛味の強い仕上がりになります。

そのため一般的な燻煙材の多くはリグニンの少ない樹種が選ばれますが、メスキート材のようにリグニン含有量の高い木材(リグニン含有量64%)が利用されることもありますので苦味が気になる場合には注意が必要です。

また燃焼温度がリグニンの燃焼に影響を与えることもあります。

燃焼温度が高すぎると苦くなりやすい?

燻煙材の温度が高すぎると苦くなります。

木材の熱分解は180℃くらいから始まりますが、積極的な分解が始まるのはセルロースが280~320℃、ヘミセルロースが200~250℃、リグニンが400℃です。このことからも燻製は300~400℃で発煙させることがポイントになります。

温度が高すぎるとリグニンの分解が進むために苦味が強くなります。

熱分解温度
セルロース 280~320℃
ヘミセルロース 200~250℃
リグニン 400℃

着火してしまわないように注意します。

一般的な木材の引火温度(口火により着火する温度)は260~290℃であり、発火温度(自ら着火する温度)は350~450℃です。燻煙材が燃えてしまうということは400℃を超えている可能性がありますのでリグニンの分解が進みます。

美味しい燻製を作るためには、スモーカー内部の温度だけではなく燻煙材の温度にも注意が必要です。

まとめ・燻製が苦くなる理由は?

苦すぎる燻製の原因は乾燥不足と燻煙材にあります。

食材の乾燥が不十分な状態でスモークすると、表面の水分に煙の成分が溶け込んでしまうために苦味や酸味の強すぎる燻製に仕上がる傾向にあります。また燻煙材の燃焼温度が高すぎるとスパイシーな風味を有するリグニンの熱分解が進んでしまうために苦味が気になってしまうことがあります。

苦味が気になる場合には注意が必要です。